クールな彼の甘い素顔
わたしの名前が呼ばれたわけではないのに、心臓が飛び上がる。
「真緒。口がへの字になってるよ」
「ッ」
由紀に指摘され、即座に口元を元に戻す。
友達とパンを食べていた翔くんは、イスから立ち上がった。
...絶対、告白だ。
わたしと付き合いはじめてから、翔くんはラブレターは無視しているけれど、
こうしていきなりの呼び出しのときにはさすがに行くようにしている。
これはわたしも了承済みである。
...でも、“への字”がやっぱりわたしの本心だ。
嫌は嫌だ。
...もし、わたしがもっとちゃんと自分に自信を持って、
自分の気持ちに素直になれば「行かないで」って言えるのかな。
“行かないで”
そう言ってもいいのかな......?ーー
ぱしっ...
わたしは自分の席から立ち上がり、教室から出ようとする彼の腕を後ろから引っ張った......。