クールな彼の甘い素顔
彼は振り返り、腕を握ってきたのがわたしだと気付き目を丸くする。
「え......と...」
ばかわたし。
自分の気持ちに素直になるにしても、今ここでしなくてもよかったじゃないか。
まわりにいるクラスメイトは、わたしの行動に驚いた様子でいる。
顔をあげれないし、下を向いているくせに目線をどこにやっていいかもわからない。
ただ、離したくない。
この腕を。
「き、...今日、バイト...ないよね。
放課後話したいから...翔くんの家に行ってもいいかな...」
彼にしか届かないくらい小さな声で伝える。
届いて......。
このまま、わたしの気持ち全部、届いたらいいのに。
「...わかった」
彼ははっきりそう言うと、教室から出るのをやめて自分の席にもどり残りのパンを食べ始めた。
わたしもおずおずと由紀の前に戻る。
クラスはざわついていたけれど、そのときちょうどチャイムが鳴り、ざわつきはやがておさまった。
由紀はやるじゃん真緒!という顔をしていた。
自信のない自分からは、もう、さよならする。