クールな彼の甘い素顔



「...あーぁ。

こんないい子、翔が手離すはずがないわけだ」



少しの間ののち、茅さんはそうつぶやいて、目に少したまった涙を指先でぬぐった。



「夏井さん。

わたし、夏井さんに言ってないことがある」



茅さんはふっきれたように、わたしを正面からまっすぐ見た。



それから茅さんは話してくれた。



翔くんの家に行き“約束通りやり直そう”と申し出たところ、彼女がいるからと断られたこと。



でも納得いかず、“帰れ”と言われても無理やり帰らなかったこと。



翔くんからはそのまま放っておかれ、フローリングで寝てしまったこと。



わたしの名前は凌くんから聞き出し、

わたしの顔は翔くんがお風呂に入っているあいだにケータイの写真フォルダから探したそうだ。


< 201 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop