クールな彼の甘い素顔
「...あーぁ。
こんないい子、翔が手離すはずがないわけだ」
少しの間ののち、茅さんはそうつぶやいて、目に少したまった涙を指先でぬぐった。
「夏井さん。
わたし、夏井さんに言ってないことがある」
茅さんはふっきれたように、わたしを正面からまっすぐ見た。
それから茅さんは話してくれた。
翔くんの家に行き“約束通りやり直そう”と申し出たところ、彼女がいるからと断られたこと。
でも納得いかず、“帰れ”と言われても無理やり帰らなかったこと。
翔くんからはそのまま放っておかれ、フローリングで寝てしまったこと。
わたしの名前は凌くんから聞き出し、
わたしの顔は翔くんがお風呂に入っているあいだにケータイの写真フォルダから探したそうだ。