クールな彼の甘い素顔
「ありがとうございます!
またお越し下さいませ!」
忙しい時間はあっという間で、ふと時計に目をやると時刻は21:50。
22時あがりだから、もうすくだ。
「ーーちょっと!夏井さん!」
そのとき、キッチンのなかからわたしの名前を呼ぶ声が聞こえて、
片付けをしていたわたしは手を止めてキッチンに入った。
「呼びましたか?」
「呼びましたか?じゃないわよ!」
声の主は鬼のような形相をしたパートの中西さんだった。
「さっきのオーダーのカルボナーラ、卵抜きならちゃんと言ってくれるかしら!?
お客さんが卵アレルギーだったみたいで、もう少しで大変なことになってたじゃない!!」
中西さんは伝票を承った氏名欄の“夏井”を指差しながら言ってきた。