クールな彼の甘い素顔
彼と花火




夏休みに入り、バイトの時間が増え、忙しい毎日のおかげで、あっという間に花火大会である10日に近づいていた。



わたしは浴衣を衣装棚から下ろして、準備万端だった......けど。



花火大会前日、9日の夕方。



『もしもし。

夏井...ごめん。

実は、凌が今日友達と公園で遊んでて、遊具からすべって落ちて左ひじを骨折したんだ。

だから、明日の花火大会行けなくなった。

凌本人は大丈夫だって言ってんだけど、はじめの一週間ぐらいは安静にさせたいんだ』



電話で話す三上くんは、とても申し訳なさそうだった。



わたしは正直すごく残念だったけど、凌くんのことも同じくらいすごく心配で。



『ほんとごめんな』



「ううん、凌くんはやくよくなるといいね...!!」



これで電話を切る流れだった。



だけど、このときパッと由紀の顔と“誘わないと後悔するよ!”という言葉が思い浮かんで。



「ね、ねえ...!

明日、お見舞いに行ってもいいかな!?」



わたしは勇気を出してそう言ってみた。


< 76 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop