クールな彼の甘い素顔
彼と花火
夏休みに入り、バイトの時間が増え、忙しい毎日のおかげで、あっという間に花火大会である10日に近づいていた。
わたしは浴衣を衣装棚から下ろして、準備万端だった......けど。
花火大会前日、9日の夕方。
『もしもし。
夏井...ごめん。
実は、凌が今日友達と公園で遊んでて、遊具からすべって落ちて左ひじを骨折したんだ。
だから、明日の花火大会行けなくなった。
凌本人は大丈夫だって言ってんだけど、はじめの一週間ぐらいは安静にさせたいんだ』
電話で話す三上くんは、とても申し訳なさそうだった。
わたしは正直すごく残念だったけど、凌くんのことも同じくらいすごく心配で。
『ほんとごめんな』
「ううん、凌くんはやくよくなるといいね...!!」
これで電話を切る流れだった。
だけど、このときパッと由紀の顔と“誘わないと後悔するよ!”という言葉が思い浮かんで。
「ね、ねえ...!
明日、お見舞いに行ってもいいかな!?」
わたしは勇気を出してそう言ってみた。