晴れ曜日
ここに寝転んで小さな空を眺めるのが好きだ。
同じような高さの建物が並んで、窓越しに見える空の範囲が狭くても、微かに見える隣家の壁や屋根に日の光が反射する様を眺めていると心が和む。
曇り空でも、思い出したように飛んでくる鳥がとても愛おしく思える。
今日は虫の声が耳に痛い。
逃れたくて外に出たくなった。
立ち上がって、窓辺に置いた椅子に座る。たくさんの小物に埋もれている窓枠から赤のマルボロソフトを手に取り、一本抜き取って咥える。簡単なつくりのピンク色の百円ライターで火をつけ燻らす。
二三度、煙を吐き出したところで、ヤニクラを起こす。慣れない煙草。それでもなぜか心地好い。テレビを見ながら、もう少しだけこのままで居ようと思った。
一本吸い終えたところで、気分がよくなり、歌を口ずさむ。
去年、マイブームだった曲だ。
サビだけ歌いきって、テレビを消した。
はがき二枚と鍵だけ持つ。靴下を履いてからスニーカーに足を突っ込む。
もう長いこと全力疾走してなかったことを思い出して、アパートの部屋の外から鍵をかけると、迷わず走り出した。
坂に差し掛かった頃、腰の曲ったおばあさんに凝視されても、かまわず走った。