終点は異世界でした。
ガチャリと奥の貫通扉が開き、現れた車掌さんにここはどこかと尋ねようとして口を開いたが言葉は着いてこなかった。
「お客様?終点ですよ。お降り下さい」
その言葉に対しても、私はポカンと口を開けたまま反応ができなかった。
ガラス玉のような緑色の瞳は、心から綺麗だと思った。
でも巻き角といい、もさりとした白い毛の生えた獣耳は羊のようでーー人間とは違う。
これは……夢?
そこまで飲んだつもりはなかったけれど、だいぶ飲みすぎちゃった??
こんなファンタジーチックな出来事が起きることなんて、非現実的すぎる。
「お客様……?どこか具合でも悪いのですか?」
ずっと黙ったまま固まってる私の顔を、不安そうに見つめながら近づいてくる羊さんに私は慌てて荷物を持って電車から飛び降りた。
ふわりと漂う不思議な空気に、ドクンと一つ心臓が跳ねた。
辺りを見渡しても広がるのは見知らぬ世界。
キョロキョロと首を動かして様子を伺っていると、またしても足音が一つ響いてくる。
少し怖くなって改札口であろう場所に足を動かした。
しかし降りる場所が全く違えば、持っているICカードなど使えるわけもない。
ーーしかも日本かどうかも分からないこの場所で。