終点は異世界でした。
道行く人が私の姿を見つける度に、手を振ったり笑顔を向けてくる。
市場の通りにたどり着けば、溢れかえる人々に私の存在はかき消されていく。
どこの露店も大繁盛していて、お店の人は大忙しだ。
そんな様子を眺めていると、ふと手に温もりを感じた。
「これ以上迷子にならないように、ね」
繋がれた右手を振りほどく理由もなく、むしろ安心感のあるアルスの手に私は力を込めた。
少し恥ずかしい気もしなくもないが、異世界にまで来て方向音痴でアルスに迷惑をかけるのは御免だ。
でも妙に身体が火照るのは、この密集して人が集まっているせいなのだろうか。
……その答えを知るのは、誰もいない。