終点は異世界でした。
大丈夫かと顔を覗こうとしたその時だった。
急に揺れた電車に足元に力が入らず転びそうになる。
そんな私を力いっぱい抱きしめたアルスの胸に飛び込む形となった。
『大変失礼致しました。発車します』
そう車内に響くアナウンスと共に、ゆっくりと再び路面電車は動き出す。
「怪我ない?」
耳元で囁かれるように言われたかと思えば、今度はアルスが私の顔を覗き込んでくる。
その顔はさっきまでの赤く染まった顔ではなく、真剣な眼差しで私を見ていた。
息が止まりそうなその感じに鼓動が大きく跳ねた。
「だ、大丈夫……アルスも大丈夫?」
「俺はこういうの慣れてるから。って、……ごめん」
慌てて抱きしめていた腕を離して、私を自由にした。