終点は異世界でした。
窓口の中へと足を踏み入れると、中はスッキリした空間でハーブのような優しい香りがそっと漂ってきた。
駅員さんは奥から一つ椅子を持ってきて私の前に置くと、座ってと声をかけて飲み物の準備をし始めた。
言われた通りに椅子に腰掛けて、部屋の中をぐるりと見渡した。
現代の日本とは違って、パソコンやら電子掲示板は一切ない。
束ねられた書類は全てインクで書いてある。
言葉は通じているのに、何故か文字は読めなかった。
そうこう観察してるうちに、駅員さんが湯気を漂わせた紅茶を持ってきてくれた。
「そちらの世界の味の好みに合うか分からないけど、一応こちらじゃ王道の紅茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
カップを受け取って香りを嗅ぐと、アールグレイに似たような香りが鼻をくすぐった。