終点は異世界でした。
終電のお時間まで残り僅かです。
ズキズキと響く痛みに徐々に意識が覚醒していく。
ハッと起き上がれば、見知らぬ森の中で月明かりでようやく辺りが見えるぐらいだ。
どうしてこんな所にいるのかと考えるよりも先に、知らない男が私に声をかけてきた。
「目が覚めたかい、物珍しい黒髪さん」
少し長めのアッシュグレーの髪を一つに束ね、全身真っ黒なローブに身を包んだ男が木の上から降りてきた。
ローブの隙間から見える腰に付けた弧を描いた鋭い剣が、月明かりに不気味に輝いた。
「あなたは……一体誰?」
近づいてくる男を睨みながら、そう問うと男はニヤリと不敵に笑った。
「ガザン。盗賊さ」
盗賊というあまり聞きなれない言葉でも、こいつはやばい奴だと頭が認識する。