終点は異世界でした。
私を見上げるガザンは一つため息をついて、口を開けた。
「元々いい階級に生まれた俺だが、魔力がない。戦争のせいで家は破綻した。そんな俺に残されたものは……何もなかった」
ぽつりぽつりと話すガザンの声に私が耳を傾けていると、アルスも私の隣へとやってきた。
「盗みをして生きることしか俺には出来なかった。頼るべき相手もいなければ、家もない。俺と同じような境遇にいるはずのあんたが……すこぶる羨ましかった」
アルスを見て言うと、ガザンは力なく頭を垂れた。
戦争のせいで、未来あるはず人達が希望を奪われた結果がこういう事を引き起こしてしまうんだ。
でも、出来ないからって道を無理やり反らすのはおかしい。
「出来なくてもいいじゃない。人には必ず得意、不得意ってものがある。最初から全てを否定してしまっていたら何もできないのは当たり前でしょ」
「でも俺には帰るべき場所も何もないんだぞ」
「それは自ら拒んでいるからでしょう?見つければいいのよ」
そう、アルスみたいに笑顔でいっぱいの暖かい環境がある場所を。
自分の帰るべき場所を、作ればいい。