終点は異世界でした。



目の前にいたはずのザガンが姿を消した。


そう理解するのには時間がかかって、気づいたらアルスが私の顔を覗き込んでいた。



「助けに来てくれてありがとう、アルス」



そう笑ってアルスに言うと、急に抱きしめられた。


展開にさっきから頭が追いついてこない。


夜風がそっと吹き抜けていき、サラサラと木々が揺れる。



「心配したんだからな。急にいなくなるなんてカンナの……馬鹿」



子供みたいな文句に思わずクスリと笑ってしまう。


そんなアルスの背中に私も腕を回した。


暖かい温もりが全身を包み込んでいく。



「ごめんね。ちゃんと私ここにいるよ」


「大事な人を急に無くすなんてもう絶対に……嫌なんだ」



お父さんにお母さん、どちらもアルスのかけがえのない存在だったのに、急に無くした悲しみをアルスは知っている。







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