終点は異世界でした。
私自身もこんな不思議なことになっているというのに、そこまで取り乱すこともないのはこの駅員さんの落ち着いた態度のお陰なのだろうか。
首を傾げた私に笑顔を向けてくる駅員さんは、どこか楽しそうに話し始める。
「トリプラー、それは迷い人、異世界から来た客人、って所かな。でも大体迷い込む場所って言えば、王都とかでっかい都市なんだけど。こんな田舎に来る人なんてまずいないよ」
どうやらこっちの世界でも私は方向音痴のようだ。
友達と集合する時も、大体一人迷子になって迎えに来てもらうハメになることも多いし、地図を見ながら歩いても着いた先はお目当ての場所じゃないことが大半だ。
それがこっちの世界に来ても起こってしまうのだから、相当の方向音痴と言ってもいいのかもしれない。
「でもここに来たってことは、ここで何かを落としたって事になるんだよね。王都だと援助も手厚いけど、広いから探しにくいってのもある。まあ、ここらだと田舎だから探しやすいかもね」
「落した……?」
「そう。こっちの世界に来たってことは、元の住む世界から、こっちの世界にーー取り戻さなきゃいけない何か大切な物を落としたんだ」
大切な物……そう言われて思い返してみるけれど、ここ最近何か失くしたり壊れたりしたことなんてなかったはず。
考えれば考えるほど謎は深まるばかりだ。