終点は異世界でした。
だけど駅員さんはそっと私の肩に触れて、大丈夫と呟いた。
日本に帰れるか否か分からないこの状況を、大丈夫と言っていいものなのか分からないけれど、私よりも駅員さんの方が色々と知っているからきっと大丈夫なんだろう。
「ここで出会ったのも何かの運命だ。手助けするよ、君の落し物探し」
「私、帰れるんですよね……?」
「君が帰りたいと願えばね。落し物が見つかっても、そこで帰りたいと思わなければ道は開かない」
帰りたくないなんて願う人がいるのだろうか。
もしかしたらこんな能天気に生活してる奴が来るのが珍しくて、本当はもっと何かに苦しむ人達が自分探しの旅に迷い込むんじゃあ……なんて考えるけれど、ここで考えた所で答えは出てこない。
私は一つ小さく頷くと、駅員さんに頭を下げた。
「どうかよろしくお願いします」
「俺もこうやってトリプラーに直接関わったことないから足引っ張るかもだけど、ちゃんと帰れるように手助けする。よろしく。俺、アルス。アルス=バザート」
差し出された右手を見て、私も笑顔を向けて手を取った。
「美澄 栞奈(ミスミ カンナ)です。迷惑かけないように、頑張ります」
握りしめた駅員さんーーアルスの手は笑顔と共に暖かかった。