終点は異世界でした。




「アル……ス?」



言葉を紬だしながら言ったその名前に、車掌さんは強く頷いた。


ああ、そうか。


私が会いたかった人……それがこの彼だったんだ。


思い出した、彼との……アルスとの落し物探しを。



「俺の中の大切なものを落としてしまったらしいーーこっちの世界に」


「へ……?」


「カンナ、君だよ。もう絶対に離さない」



そう言って優しくキスをされて、再び抱きしめられた。


そしてテーラさんに言われた言葉がようやく分かる。



『それと……一度これと決めたら絶対変えないので、覚悟しててくださいね』



何のことかと思っていたけれど、アルスのことだったんだ。


まさかアルスがこっちの世界に来るなんて、誰が想像できるだろうか。




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