moon~満ちる日舞う少女~【外伝】
堕ちる
「はぁぁ?!…会えなかっただとぉ?!」
次の日、俺に依頼してきたヤツに金の入った封筒を返し、会えなかったと伝えた。
真田「んまぁ」
「ッチ。…昨日がチャンスだったのに現れなかったのかよっ」
真田「チャンス?」
「はぁ……会えなかったってことは、誰だかわかってんだろ?…そいつ、満月の日にしか現れねぇんだよ。しかも、毎回現れる場所もわかんねぇからな。…………街が治安悪いって聞いたから、もしかしたらでるかもって思ったんだけどなぁ」
なるほどな。……フルムーンって名乗るわけだ。
「まぁいいや。また頼むわ」
フルムーンに会った。…けど俺は何もしなかった。……あの金があれば少しは母さんの負担も減らせたはずなのに。
『いってらっしゃい。真田』
母さんのやつれながの顔が浮かんでくる。
真田「クソッ……!」
何やったんだよ、でもフルムーンには敵わないしそれに…フルムーンが言った言葉に惹かれてる自分もいる。
仲間がほしいわけじゃねぇけど、あの人の言葉はなんだか心に染みる。
岡「あ、東山〜」
真田「……岡セン」
岡「だからその呼び方はやめろって!岡田先生だろ?」
この人は岡セン。一応俺の恩人だ。……俺の家の事情を知って、理事長に『俺が毎回テストで1位をとれば、中学生だけど奨学金扱いにしてくれる』という交渉をしてくれた。
時々俺のことや母さんのことも気にかけてくれるいい人。……うっとおしいくらい説教してくることもあるけど。
感謝してるし本当に恩人だって思う。まぁ先生って呼んでやったりはしねぇけど。
岡「はぁ……。…それよりも、今回もまた1位だってな」
真田「……あぁ、そうっすね」