dieっと


懸垂をしていない。


カロリーを消費していない。


それなのに、幕が降りるようなスピードでバーが下りてくる。


となると、考えられることは1つ。


「痩せたんだ」


私には分かった。


篤志はこの短時間で減量した。


だからあんな速さで逆転できたんだ。


1kgや2kgじゃない。


それ以上に痩せた。


「どうやったんだ?」


「それは__」


いくら小塚さんにでも、答えにくい。


私には分かる。


だって私には、同じ痛みが分かるから。


篤志が始め、具合が悪そうにしていたのも納得だ。


本当に具合が悪かったんだから。懸垂が1回もできないくらい、お腹が痛かったはずだ。だからあんなに顔色が悪く、脂汗をかいていた。


この戦いが【減量】だと悟った篤志は、始まる前に予め飲んだに違いない。


自分の【尿】を。


ぶら下がりながら、垂れ流しているんだ。


今もどんどん痩せている。


可笑しくて可笑しくて仕方がないと、笑い声を上げながら__。


「危ない‼︎」


誰かが叫んだ。


本郷守が落ちた。


まだ、天井の針に刺さっていないのに?


握力がなくなって、力尽きたのか?


いや、そうじゃない。






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