dieっと


アキが目玉をひん剥いて、喘いでいる。


空気を掴もうとする指先は痙攣するが、足が固定されているために、身動きが取れないんだ。


ステーキの塊が、逆流する途中で軌道を塞いだに違いない。


いくら前もって水を飲んでも、あれだけの量だ。


引っかかって出てこないだろう。


これで篠田さんの勝利だ。


間一髪のところで助かった。肉を詰まらせたアキに感謝をする__?


「ちょっと篠田さん⁉︎」


私は身を乗り出して叫んだ。


なぜなら、立ち上がったからだ。


拘束されていた足を力づくで解き、腰のベルトも引き裂いて立ち上がると、隣の天秤に飛び移った。


振動で地面が揺れる。


すぐにアキを後ろから羽交い締めにすると、体を締め付け始めた。


「えっ、一体なにを⁉︎」


放っておきさえすれば勝てるのに、何度も何度もアキの体を押し上げている。


「頑張って‼︎」


篠田さんが怒鳴った。


対戦相手である南アキに、頑張れ‼︎諦めるな‼︎と檄を飛ばして背中を圧迫している。


助けようとしているんだ。


やがて何度目かに突き上げた時、ゴボッと肉の塊が出てきた。


アキが激しく咳き込むが、先程までとは意味が違う。


命が助かったんだ。


そして篠田さんは、助かるはずの命を投げ捨てた。


アキを助けるために__。








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