dieっと
「傘⁇」
「そう。何かの役に立つかと思って、隠し持ってったんだよ。それがまさか、屋根になるなんて」
照れ臭そうに笑う小塚さんは、ようやく顔についた土を拭ったところだった。
小塚さんによると、掘る範囲が狭かったため、土の中にすっぽり入り、傘をさして砂避けをしたらしい。
運良く助かったんだ。
傘のお陰で命拾いしたというわけ__。
「偶然、傘を持ってたってわけか?」
険しい表情で、篤志が詰め寄る。
「それも用意周到に折り畳み傘を?まるで砂が降ってくるって知ってたみたじゃないか?」
「そんなの、たまたまじゃない?」
私は2人の間に割って入る。
まずは喜ぶべきだ。
小塚さんが勝ち抜いたこと、助かったことを喜ぶべきであって、疑うことじゃない。
対戦は予測不可能だ。
何があるから分からない。
だから武器となるものを隠し持っていたって不思議でもなんでもないのに__。
小塚さんは、笑ってはいなかった。
いつもの、周りを明るくする笑顔じゃなく、すーっと目を細めて篤志を見つめている。
初めて見る、小塚俊一。
それはどこか、私の心まで見透かしているような鋭い眼差し。
しばらく2人は、見つめあっていた。
先に目を逸らしたのは__篤志だ。
「くそっ」と毒づいて、行ってしまった。
すると小塚さんは、顔をくしゃくしゃにして笑ったんだ。
あの、いつもの熊さんスマイルで。