dieっと


何日経っただろう?


いや、まだ何分かもしれない。


時間の尺度が分からないことが、私をさらに追い詰めていく。


異臭がする。


これまで亜季を包み込んでいた獣臭ではなく、腐敗の匂い。


亜季が、腐り始めている。


それなのに、匂いが自分の体から沸き起こっている気がしてならない。


腕の匂いを嗅ぐ。


血だ。


こびりついて乾ききった血が、腕の中に入っていく。


「嫌‼︎」


手のひらで血を拭うが、染み込んでいるように取れはしない。


爪で引っ掻いて剥がそうとするが、肌に食い込んでそこから血が流れ出す。


その時、びくんと体が跳ね上がった。


どうしようもない、喉の乾き。


もう飲み込む唾でさえない、猛烈な乾きが襲ってくる。


血のせいだ。


つーっと垂れていく血以外、なにも目に入らない。


ダメだ‼︎と抑制する間もなく、私は自分の腕に噛み付いていた。


血を啜る。


なんとも形容し難い、生暖かい血の味が口の中に広がる。


これで喉が少しでも潤うのかと思ったら、その逆だった。


体の中の、血という血が暴れ出したように、喉が渇いて仕方がない。


自分の血では治らない【慟哭】が体を突き上げる。


自分が、消えていく感覚。


助けて、誰か助けて‼︎







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