dieっと


☆☆☆☆☆


「ひっ‼︎」


息を呑んで、亜季の腕を投げ捨てた。


な、なにをしているのだろう?私はなにを__⁇


這うようにして、隅っこに逃げた。


「大丈夫」と呪文のように繰り返し、頭を打つ。


痛みが欲しいからだ。


手のツメは、もう全て剥がれ落ちた。


意識がなくなるまで、なんなら死ぬまで打ちつけてしまえばいい。


早く忘れなければ。


肌に歯を突き立てた感触と、喉の奥に流れ込んでいく血の味を、私は忘れなければならない。


そうしないと、また襲ってくる。


どうしようもない【飢え】が、襲ってくる。


支配されてはいけない。


村上由加里は、私のもの。


私だけのもの。


誰にも渡さない。


渡さない__。


ふと気づくと私は、亜季の首筋の匂いを嗅いでいた。


「嫌‼︎」


理性が叫び声を上げる。


すぐに壁に向かって、額を打ちつける。


かち割れるくらいの勢いで。


いくつもの星が散り、そのまま仰向けに倒れた__。


けれど。


目が覚めると、私は亜季の喉元を舐めていた。


ぺちゃぺちゃ。


歪(いびつ)な音が聞こえ、それを発しているのが自分だと知っているのに、止めることができない。


喉を鳴らして、私は亜季の乾いた血を舐めまわした。


抗(あらが)うことができない、欲求の渦に飲み込まれていったんだ__。






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