dieっと


☆☆☆☆☆


操られていた。


どれだけ亜季から離れても、ふと気づくと死体の側にいる。


今すぐ、襲いかかろうとでもするように。


自分を見失ってはいけない。


意識を失うことも、眠ることも許してはいけない。


手綱を握ってるのは私なんだ。


奪われちゃいけない。


隅っこにで小さくなり、体を強く抱き締める。


震えは止まらない。


それどころか、どんどん強くなる。


なぜなら__。


まただ。


また私は、亜季に覆い被さっていた。


気を失ってなんかいないのに、気づけば死体を間近で眺めている。


磁石のように惹きつけられ、離れることができない。


慌てて離れるも、瞬きをするごとに死体に近づいていくんだ。


いや、死体じゃない。


【肉】だ。


腐敗が始まっているというのに、よだれが出る。


どれだけ臭くても気にならない。


この耐え難い空腹が、満たされるのなら__。


両手で、亜季の腕を持ち上げた。


砂漠で見つけた熟れた果実のように、愛おしそうに口に運ぶ。


硬直した肌に、歯を立てた。


吐き気を催す腐った匂いに、胃が激しく痙攣する。


痛いんじゃない。


胃が、喜んでいた。


肉を喰らうことに__。




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