dieっと


とうとう水は胸元まで押し寄せ、足元をすくわれそうになる。


「早く!早くして‼︎」


「やってんだろうが‼︎」


毒づいた篤志が、私を切り刻む。


水の勢いで、アキの赤黒さが浄化されている。


そんな中、黒い線が渦を巻いて流れていく。


私の【毛】だ。


全部、切っても1kgになるかわからない。


それでもやらないと。


「おい、マジでいいのか?」


セミロングから、ざん切りボブになった私を気遣って尋ねてくる。


ここからはショート、いや、ベリーショートもしくは角刈りだ。


「坊主にして‼︎」


もう、しのごの言ってられない。


髪の毛はまた生えてくる。


どれだけ不恰好だろうが、今はここを出るのが最優先だ。


どんどん切り落とされていく、私の髪の毛。


切られたそばから、吸い込まれるようにして流れていく__?


「えっ」


まただ。


また、水が濁り始めた。


アキはもう、食べ尽くしたというのに?


由加里を見やると、きょろきょろと辺りを見回している。


小刻みに首を動かし、鼻の穴が膨らんでいた。


小動物のようなその動きは、なにかを探しているように見える。


「おい、なんだこれ」


篤志も声を上げた。


水面が、赤く染まっていく__。



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