dieっと


おかしな気配に、私は目を覚ました。


すぐにその異変を知る。


荒い息遣いが、耳から首筋を撫でていく。


由加里だ。


由加里が、私の匂いを嗅いでいる。


忙しなく鼻を動かし、脇腹に顔を埋めるようにして確認しているんだ。


これは、食べていいのかどうか。


お守りのように握りしめていた、はさみ。私はその手に力を込めた。


鼻息は再び、うなじ辺りに戻ってきた。


そして__舌先が舐める。


味見をするように、私を舐めた。


その瞬間、びくん‼︎と体を震わせてしまった。驚いた由加里が飛び退く。


威嚇するように嘶(いなな)く様は、もう人ではない。


獣そのものだ。


起き上がることなく、そのまま身を横たえる。


お守りを強く握りしめたまま__。


はさみを持つ手が、とても冷たい。


食うか、食われるか。


殺すか、殺されるか。


私に、由加里が殺せるだろうか?


いや、もうあれは由加里じゃない。もう、元には戻らない。


いつも優しかった由加里。


思いやりに溢れて、支えてくれた。また再会し、一緒にダイエットをするはずだった。一緒に買い物をして、美味しいものを食べて、由加里となら楽しくダイエットができたはずだ、きっとそうだ。


私は泣いた。


声を押し殺して、泣いた。


もう、限界だった。






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