dieっと


懐かしい、あの公園。


いつも最後は、夜の公園で〆るのが日課だった。


そこには、誰も居ないから。


居たとしても、暗くて分からないから。


私が太っているのが、分からないから。


「真帆、今日はありがとう」


雅也が、素直にお礼を言う。


こんな殊勝な雅也を、今まで見たことがない。


「私のほうこそ、ありがとう」


「あの、それで話なんだけどさ__」


歯切れが悪くなった雅也に、急に抱き締められた。


すっぽり、その腕の中におさまる。


「雅也?だめだよ」


「俺、やっぱり真帆が好きだ!」


「でも、彼女は?」


「彼女?」


ん?と首を傾げる。


デブだから別れようと、言ったじゃないか。


細くて可愛い彼女の肩を抱きながら。


「あぁ、あいつとはとっくに別れた。あいつさ、なんか急に太りやがってさ。俺がデブ嫌いだって知ってんのに」


「そうなんだ」


「それに引き換え、真帆は痩せたもんな。すげぇよ」


「雅也を、見返したかったから」


「傷つけて、ごめんな」


「ううん」


「もう1回、真帆とやり直したい」


「うん」


「ホントに?ホントに俺でいい?」


「雅也がいいの」


「真帆」


雅也が、近づいてくる。


目を閉じて、近づいてくる。


私はそれを、見つめていた。


目を見開きながら。



< 334 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop