dieっと


な、なにこれ⁉︎


私は1歩、中に入っただけで足が止まった。


暑いなんてもんじゃない。


熱風がスタジオ内で渦を巻いている。


体が焼けるように痛くて、まともに息さえできない。


これであと50分なんて無理だ‼︎


思わず入り口を振り返るが、由加里を頼ることもできない。


仕方なく中央に向かう。


「こ、小塚さん⁉︎」


熊が冬眠するかのように、眠っている。


死んでいるのかと思って巨体を揺らすと、薄っすら目を開けた。


でもすぐ閉じた。


その理由は私もすぐに分かった。


汗が目に入るからだ。


しばらくすると、体の中がじんと重くなり、発火するように汗が飛び出していく。


動かないのが得策だ。


私もじっと神経を集中させる。


浅く息をし、目を閉じて暑さをやり過ごす。


心頭滅却すれば、というだろう。


そんな私の思いも虚しく、時折、風が吹いた。


緩やかな風のはずなのに、熱が乗って体をあおり、その都度、体が溶けてしまいそうなくらいに熱くなる。


ひたすら我慢して耐えるしかない。


余計なことはなにも考えず、目を閉じて時間が過ぎるのを待つ。


私は目を開けた。


時間は、たったの5分しか経っていない。


もうダメだ。




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