妻の知らない夫の時間
第3章
数日前また瑠璃子は親友の洋子に会った。勿論その後の陸男と女の件でだ。
「陸男さん本当にずるいわ。療養中の瑠璃子をだまして自分がさんざ楽しんだくせに、いざとなったら女同志戦わせて。妻だましているのに、なにくわぬ顔で家庭に帰って平然と暮らしてそういうのが一番わるいのよ」
「私もそれが一番くやしい。毎晩平気で一緒にお風呂にはいって色々会社の事しゃべっていたのよ」
「エーッ、そっか、瑠璃子んとこは仲よかったんだ。その女はね、遊び人なのよ、詐欺師なのよ、瑠璃子が相手にするような輩じゃないのよ、早く忘れなさい。接骨医がいってたわよ、どこまで腰が曲がるか自分にきびしくかかす人はなかなか腰痛が直らないって。ほおっておいて忘れるくらいがちょうどいいんだってさ」
「洋子ー、私、陸男が嘘をついた時間のなかで私の所へ帰る下りの電車でなく、女の所に行く上りの電車にのっている顔をリアルに想像するのが一番いやなの。それが6年も続いていたなんて死ぬほど苦しいわ。それからね、公園とかの公衆トイレに女が入っているのを陸男が恥ずかしそうに待っているうろついた姿、あれは気が狂いそうになるほどぞっとする。そんなことを何十回も陸男がのぞんでやっていたとおもうと本当に生きていたくなくなるわね」
「瑠璃子ったら本当に純情なんだからさー。私だったら自分が痛い腰を直す間、他の女が亭主のめんどうをみてくれてタスかるーってかんがえる」
「洋子はあかるくっていいわね、ああ、お金持ちだったらいいな。そしたらハワイのコンドミニアムへ洋子といってさ、そう半年くらい、毎日油絵描いたりフラダンス踊ったりしてノンビリおしゃれに贅沢に過ごして、一切陸男のことをわすれたい」
「その間にほんとうに離婚されて、女のところに行かれたらどうするの」
真っ青になる瑠璃子、笑いだす洋子、、、。
 話はかわるが、最近残り桜を老いた母親に見せたいと陸男がいうので、瑠璃子は人がいいのでボヤ騒ぎの渦中ではあるは一日親孝行をしてもよいなと思い立ち陸男のふるさとにでかけた。
誰よりも陸男を溺愛している母親は狂喜して支度した。途中スーパーでも車から降りていっしょに弁当等、買い物を楽しんだ。母親は足が悪いので、瑠璃子も始終腕を持ちささえた。
事件はいよいよ残り桜のある山公園でのことだった。
駐車場はなるべく頂上近くを探した。母親が歩く距離が少ないことを思ってのことである。が、うまく見つからず、ついたのは階段の下の駐車場だった。
母親は頑張って歩いたが、階段は流石に躊躇した。とちゅうまでは手すりにすがりつつ登ったが、最後の階段はキュウで、瑠璃子が声をかけた。
「陸男さんがおぶってさしあげれば」
勿論、これが最後の親孝行になるかもしれないと思い気をきかせたつもりだった。
所がである。母親はおもかった50Kあったそうである。
ゼイゼイとあがりきったところで、そっと下せば何も起こらなかったものを、、、。

陸男は母親の重さに耐えきれなかったのか、自分がそこで転び、母親はほおりだされたのだ。人々が寄ってきて瑠璃子は「こりゃー大変、救急車かー」と思った。呼ばなくちゃと考えてると母親が「おこしてくれ」
やれやれとふたりで助け起こした、ああ、大事無かったようだが、母親は弁当はちゃんとと食べたが花見もそぞろで自分の体を気にしているので、とにかく医者につれていった。
 母親はすっかり子供のように瑠璃子に用事を言いつけ、こころをとざしてしまった。
 陸男は自宅に帰ると思いがけないことを口ばしった。
「ざま―みろと思っているんだろー。御前のせいだ。御前が全部仕組んだんだろう、階段途中で転べば母親と俺が転んで死ぬからいいと思ったんだろう。俺はお前がヤキモチヤキな性格だから、嘘をついて女たちと遊ぶしかなかったんだ、嘘をつかなければなにもできない、皆嘘くらいつくさ」
何て勝手な男なんだろう、陸男の母親の面倒を診たのは瑠璃子だし、陸男の浮気まがいを突きつけられ毎日針のムシロなのも瑠璃子だ。
世の妻はこんなどうしょうもない夫とすでに37年もいっしょになって暮らしている現実をどう対処するのだろうか?もう怒る元気もない。
 ところで、斉藤さんにおんな達との仲裁をたのんで2週間たつのになんの連絡もない
おもいきって電話した。昼はかからずまた夜かけた。

世の中は不思議だ、いやこの事件がおこってからというもの反対のことが平然とおきている。
優しかった斉藤さんが急変していた。2週間なにもやらなかったそうだ、おんな達とも連絡すらとらなかったという。あの時は優しく「A、Bとも自分の元部下です。はなしてみます」といったのにだ。
「だったらね奥さま、ネッ、自分で、斉藤さんにすべて話しました、と女たちに手紙を書いたらいいでしょう」
イマヤ、ガラの悪いヤクザになってしまった斉藤さん平然とはいた。
 2週間前は紳士的だったのに今は悪魔みたいだ。
要するに手は汚したくないってことだろう。面倒にかかわりは避けたいってことか?
仕事では偉かった癖に実際はクソ野郎だったのだ。
 多分斉藤さんの奥さんにそんな怪しい女たちにアンタが会ったら今度はうちのが骨抜きにされ家庭がメチャクチャにされるから絶対関わっちゃダメとかなんとか釘を刺されたんだろう。
まっ、いいでしょう。
とにかく斉藤さんがいったので、すぐA,Bのおんなには、「斉藤さんに全てはなしました」メールはした。さて細工はりゅうりゅう、仕上げはいかに、、、だ。
やっぱり図太いAはなにもいってこなかったが、きが弱いのか年寄りのBはすぐめーるをよこした。
「自分がAにメール係をやらせたのがいけなかったんですー。なんとか自分に免じておさめて」あいかわらず同じことをくりかえしているおバカな、年寄り。
「貴女の過ちはAに全部任せた事なんかではなく、最初に三人でやってはいけないことを、年上として止めなかったこと、です、既婚者の二人が写真送り交際をしているのもとめなかった、おなじです」
とメールしてやった。
 そしたら「自分、今体調わるく安静ちゅうです、対応できません」やはりどこまでも卑怯なB。
ここもA,Bとも同じ。
スグ弱さを出して逃げ切る。やることはやったくせにだ。
「またいいとこへつれてって」
「遠足の前の晩みたいに嬉しくてドキドキして眠れないの、じょうしー。」

この言葉は陸男のこころをかきむしったらしい。
「少女みたいなひとだな」

ああ、また振り回されているな瑠璃子よ、バカはうつるものだ。戻れ正気に、、、。
最近陸男はこんなことを瑠璃子にいった。
 女夜叉のサイクルにすべて取り込まれてしまっていた陸男。
いつもどれるんだ?

お菓子は捨てながら「俺は何をやっているんだろう」とおもっていたそうだ。

それでも女たちが「マタツレテッテ」コールを繰り返すので、いつまでも何年も永遠にやめられないんだそうだ。依存症っていうんだよ。意志薄弱野郎。
あーバカだ、瑠璃子よどうしてこんなに年よりなのにおバカな夫とつれそっているのだろう、自分で自分がいやになる、、、。

翌日、久しぶりに悪女Aからメールがあった。ずっと着信拒否、手紙も何度だしても無視をつづけてきたのにだ。
「斉藤さんに話しました」、メールが功をそうしたのであろう。
でもあいかわらずの上から目線。
「私たちは価値観がちがいます。もう対応できません、お世話になりました」

オイオイ、これでうまい具合に切ろうってのかい。謝罪も償いもなしで、、、。
第一アンタには夫との浮気疑惑があるだろう、それは釈明しないとお互いまずいのでは?
「ふざけんな」。
という訳で、こちらからもメールを。
「これは感情論ですので考え方の相違で解決はできません。次の仲裁者をかんがえています」
このメールはききすぎた感がある。
なぜなら夕方にはすぐメールがり、まず脅しのが一通
「もう前の前に既にメールで謝罪はすんでいますよ」何言ってる、単なるメールだし、言葉少なだし、はっきりとは謝ってはいないぞ。
それにそっちが「逆に私A子の夫に先にあやまれ」とほざいているぞ。
「上司。これ以上メールで謝罪要求やったらパワハラです」

さらに続いてメールがあり
「上司は公平な方で尊敬も信頼もしておりましたのに、こんな脅しをして私をこわがらせるなんてA子はとても悲しいですー、クスン。」

オイオイこれはヤクザがいつも使う手じゃないか、ゆすぶって落とす奴、最初に脅し、次に温情たっぷりにやさしく諭すやつだー。

夫も流石に腕をくんでいた。
「これはあんに、お前にここで終止符をうつよう示している。お前がこれ以上つづければお前の亭主をうったえるぞ、どうだ。」とね。

瑠璃子はまた貧血をおこしそうだ。あああ、私がまた夫を盗られ遊ばれまた脅され、怒って謝れとつめよれば脅しをかけられ、ここまできて全てあきらめて引き下がるしかないような運命か?
言葉がない。
あのオンナー、クソおんなだ。卑怯極まりない。仕事でも何年も夫のお世話になり、それからも夫を誘惑して足掛け6年も私の夫に妻に嘘をつくようなまねをさせてまで楽しい思いをしたんじゃないか、認否人だ。その夫をパワハラ呼ばわりして脅すなんて、、、。

夫が「パワハラは心外です。メ-ルだけの謝罪でわかりました、という人がいるでしょうか?Bさんは妻にぶってもいいと言ったそうです。誠意を見せてください、それと上司といわないでください、もう何でもありませんから。」
そのメールはAを激高させた。

即メールがきて(ショートメールです。続けてきます。まともなメールは昨年からいくらいっても着信拒否のままです。)
「話し合う余地はもうありません。ショートメールも着信拒否します。返事はうけつけません。」

この女は返事に窮すると全てを拒否して見ないふりをする。頭は小学生なみだ。多分、「もう上司と親しく呼ばないでくれ」、という下りがさらにむっとしたのである。(アタシの女力に屈しないオノコなんか要らない、このアタシを断るなんてゆるせない。こちらから切ってやる)、といったところなんであろう。
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