LOVE DAYS
「もういいっ、」
フンっとそっぽ向いて頬を膨らませたまま駆け足で校舎に入る。
教室に着き、椅子に座った瞬間、スマホのマナーの密かな音に手を伸ばす。
「え、うそっ、」
思わず声が漏れるのと同時に頬が緩む。
さっきまでの嫌な事がいっきに消し去るかのように、画面に映し出される文字に心が弾んだ。
″萌、明日って空いてる?良かったら会わねぇ?″
佐々木君だ。
中学の3年間、同じクラスで一番仲がよかった人。
ずっと友達で、でもそれ以上は何もなかった。
佐々木君はあたしの事を何とも思ってなかったけど、でもあたしは佐々木君に憧れてた。
中学の中では人気でモテてたからあまり口にはすることは出来なかったけど…
高校は別々になったから会う機会なんて徐々に減って来て今では全くになっていた。
だから、こんな風にまだあたしの事を覚えてくれていて、連絡をくれる事に胸がドキドキした。
「あんた何笑ってんの?気持ち悪い…」
呆れた表情で目の前に麻友ちゃんが座った。
麻友ちゃんは鏡を取り出し、髪を整えながら、チラッと視線を向ける。
「いい事があったの」
「いい事?」
「佐々木君がね、明日会おうって」
麻友ちゃんを見つめながらあたしは嬉しそうに頬を緩ませた。