孤独なメモリア
1、暖かかった家庭
パトカーの音が聞こえる。
その音が近づく度に鼓動が速くなるのを感じる。
僕は今、何をしているんだろうか。
なぜ、こんなにも…

…涙が、止まらないのだろうか。

僕は……いや、私は黒鐘 凛(クロガネ リン)。
小さい頃は綺麗な黒髪を伸ばし、純白なワンピースをひるがえして、よく両親とピクニックで走り回っていたものだ。
今でもあの時の事は鮮明に覚えている。
とても幸せな毎日だった。

そして私が小学3年生の頃。
もともと体が弱かった母は重い病気を患い、倒れてしまった。
父は大企業の社長で、お金を沢山かき集め、必死に回復を試みた。
けれど、私が4年生に上がる頃、母は遠くへ行ってしまった。
笑顔の耐えない、とても優しく聡明だった母。
母の葬儀には沢山の人々が訪れてくれた。
私は父の隣で泣き喚いていた。
いつもなら優しく抱き上げてなだめてくれる父は、母が遠くへ行った日からおかしくなった。
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