孤独なメモリア
先生からアビリタと診断されてから、父はまた一言も離さず家に着いた。
私は診断書を詳しく見ようとリビングへ向かおうとした時、「凛。」急に父に呼び止められた。
「…何?お父さん。」
何故だろう。いつもなら、こうやって父に名前を呼んでもらえたら嬉しいはずなのに。
何処から湧いてきているのか分からない不安がある。
父がよってきて、私の両肩に手を置く。
「お父さんね。凛に手伝って欲しいことがあるんだ。お父さんのお仕事のお手伝いなんて滅多にない貴重な体験だぞ?やってくれるよな。」
父は微笑んでいた。
なのに目は光っていなかった。
「…でっ、でも…。」
離れようとするが、肩をしっかりとつかまれていて離れられない。
「やってくれるな?」

「…うん。お父さん」
私は初めて父に恐怖を抱いた。
とても怖くて怖くて、震えてしまった。
まるで、父の曇った瞳の中に吸い込まれるような。
とにかく恐ろしかった。
「ありがとな。お前は俺の宝だよ。凛。」
父はニタリと笑っていた。
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