極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
禁止事項が書き記された紙の束の半分程で、シェールは確認作業を放り投げた。

再びだらし無くソファーにひっくり返ると、天井を見ながら溜息を吐く。

「最後まで確認する必要が無いくらい手遅れだわ」

少し考えてみれば、勝手に館を抜け出し外出している事で、言い訳のしようも無い程契約違反をしていた。

「いろいろ細かすぎるのよ。こんなの守れる人がいたら会ってみたい」

ブツブツと愚痴を言っても返事をくれる人はいない。

やる事もなく、話し相手もいないこんな所で、言い付け通りに暮らすなんて、本来活動的なシェールには無理だ。

禁止事項を作った教育係りは、規則を守れると本当に思っていたのだろうか。

「私だって初めは真面目にしていたんだけど……」

我慢の限界で思い切って外に出て、自分らしさを取り戻して楽しくて……少しだけと思っている内に段々と悪い事をしている自覚が薄れていた。

館を抜け出す事の罪悪感なんて、今となっては全然無い。


「人はこうやって悪事に手を染めて行くのかしら……でもやってしまったものは仕方ないわ」

一人納得して、よいしょと体を起こす。

過ぎた事を思い悩んでもどうしようも無いのだから、今はこれからどう誤魔化すかを考えるべきだ。


「とりあえず、明日の準備をしよう……マグは服にもうるさいから」


シェールは秘密の箱を元どおりに仕舞うと、久しぶりに嫁入り道具の衣装箱に手を伸ばした。

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