極上な王子は新妻を一途な愛で独占する

「なら、アルフレート殿下をここに呼びなさい」

「えっ？」

「丁度良かった。一度見てみたいと思っていたのよ、噂の王弟をね……」


マグダレーナは悪い笑みを浮かべ、それは楽しそう。

こんな時は何か良からぬことを企んでいるのだと、短い付き合いでも気付いていた。

マグダレーナにアルフレートを合わせては駄目だ。
まあ、アルフレートがこの館に戻る事は無いだろうから二人が会う可能性はほぼ無いけれど、マグダレーナを追い返す口実を失ってしまった。

（どうしよう……）

千日目を迎える時、マグダレーナが居ては絶対に困るのだ。
このままでは計画が全て崩れてしまう。

何とかして追い返そうと、あれこれ考えてみるものの、良い対策は思いつかない。

シェールの立場は弱いから、無理に追い出す事は不可能だし、良心に訴える作戦は効果が無い。

悩んでいると、マグダレーナが立ち上がりウロウロと部屋を観察し始めた。

「アルフレート殿下には急ぎ戻る様、手紙を送っておきなさい……それにしても何も無い館ね。シェールはいつも何をしているの？」

マグダレーナは眉をひそめて言うと、窓の外に目を向ける。

「庭もただ木を植えてるだけ。散歩する気も起きないわ」

ユジェナ侯爵家の豪華な庭園と比べているのか、マグダレーナは不満顔だ。

「ご覧の通りこの館にはマグダレーナ様が楽しめるような物はありません。やはりお帰りになった方が……」

しつこく帰宅を進めるシェールに、マグダレーナは思いついた様に声を弾ませ言った。

「シェール、村に行ってみるわ。供をしなさい」

「……え？」

「何、ぼんやりしているの？ 村に行くと言っているの。お前、案内しなさい」

「私が案内？ そんな！」

王弟妃の姿で村に行くなんて絶対無理だ。

（もしカレルに会ってしまったら、王弟妃だって事がばれちゃう！）

カレルにだけは知られたくないのに。