極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
いろいろと理由を付けて外出を妨害しようとしたけれど、マグダレーナの決意は固かった。

シェールは憂鬱になりながら、馬車の用意を頼む為、家令の部屋に向かった。

今まで用が無かった為、訪ねるのは初めてだ。
使用人達の部屋は屋根裏にあるのだけれど、彼の部屋だけは二階の西側。アルフレートの部屋の近くにある。

ノックをすると彼は警戒せずに扉を開き、シェールの姿を認めると、とても驚いた顔をした。

「ラドミーラ妃殿下?」

「義姉が外出したいと言っています。馬車の用意を」

用件を告げると家令は慌てた様子で、背広からベルを取り出し鳴らし、男性の使用人を呼び出した。

(あのベルいつも持ち歩いているのかしら)

そんな事を考えていると、家令が恐縮した様子で言った。

「わざわざこの様なところまでお越し頂き大変申し訳御座いません。御用がある際はお呼び頂ければ直ぐにお伺い致します」

「構いません」

誰かに頼むより自分で来た方が早いと思っただけだ。それに家令には聞いておきたい事が有った。

「義姉の事を殿下に伝えましたか?」

「はい、昨日の内に知らせを出しました」

「そう。殿下は何て?」

「承知したとの事です」

予想はしていたけれど、無関心を貫くようだ。

「義姉はしばらく滞在したいそうです。殿下に伝えて」

どうせろくな返事は返って来ないだろうけど。
この館で起きる事など自分には関係ないと思っているようだから。

「馬車の用意が整いましたらお伝えいたします」

「ええ」

自分で何とかするしかない。
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