極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
侍女に詳しく聞いたところ、精霊が実在するのではなく、そういった言い伝えがあるとの事だった。

(貴族が信じている昔話?……まあ、一応手紙に書いておこうかな)

シェールはすっかり冷めたけれど、マグダレーナはやや興奮気味だ。

「私も精霊に近い存在って事ね」

なんだか嬉しそうに見える。
彼女は機嫌良いまま、脱線していた話を戻した。

「ますますカレルを放っておけないわ。彼はきっと王族のご落胤よ」

「ご落胤って……身分高い人が身分の低い女性にひっそり産ませた子の事ですよね?」

「そうよ。実は結構ある事らしいわ。シェールだってユジェナ侯爵家のご落胤じゃない」

「そうですけど……」

あのカレルが王族なんて信じられない。

あんな、世慣れした王族がいるだろうか……でも初対面のとき、カレルの綺麗な顔を、まるで王子様のようだと、感じたのも確か。

「明日会いに行ってみるわ」

マグダレーナの宣言に、シェールはビクリと肩を震わせた。

「……会いに行ってどうするのですか?」

「まだ決めていないわ。実際会ってみないと何も言えない」

「そう、ですか……」

胸に不安が渦巻いた。
マグダレーナがカレルを見たら、間違いなく気にいるからだ。

(マグは見目麗しい男性を好むから)

カレルと出会って一年。
ゆっくりと築いてきた関係が、変わってしまうような気がする。

それがとても怖かった。

いつまでも一緒に居られないのは分かっていたけれど、まだ心の準備が出来ていないのだから。
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