極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
翌日、マグダレーナは宣言通りノーラの診療小屋に向け出発した。

「シェールは必要ないわ。昨日で村の様子は分かったし、来ても何の役にも立たないんだから」

マグダレーナはそんな捨て台詞と共に、侍女と護衛を引き連れ颯爽と館を出て行った。



ひとり残された部屋で、シェールは落ち着きなく歩き回っていた。

マグダレーナが戻って来ないかと、窓の外を見ては何も変わらない景色に落胆する。

「カレルとマグが会わないといいんだけど」

ソファーにどさりと座りこみながら声に出す。

マグダレーナがカレルに無理を言わないか心配だ。
かと言って強引について行く事も出来ない。

「マグと一緒に居たら王弟妃だってばれちゃうもの」

誤魔化そうとしても、マグダレーナがいる限り無理。状況を察して口を閉ざしてくれる可能性は無い。


じりじりしながらマグダレーナの帰宅を待ち続けたシェールは、夕方戻って来た一行の姿を窓の外に見つけると、ようやく安心して力を抜いた。けれど……。


「村のはずれでカレルと会ったわ。本当に黒髪で信じられないくらい綺麗な顔をしていた。あれは絶対に王族よ」

戻って来るなり興奮気味に語るマグダレーナを見て、顔が強張るのを止める事が出来なかった。

マグダレーナはシェールの変化に気付かず、機嫌よく言う。

「お前も見たら驚くわよ。まるで都の王子のようだもの」

嬉しそうに語る顔。

(マグはカレルに好意を持ったんだわ)

そう悟ると焦る気持ちがこみ上げて来た。

「カレルをどうするつもりなんですか? 」

「どうって?」

「だから、今後の事です。また会いに行くんですか?」

あまりしつこく聞くと怪しまれると分かっていた。

だけどマグダレーナがカレルをどうするつもりなのか、知りたい欲求を抑えられない。
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