極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「実は自分は高貴な身分だったと知ったらカレルも喜ぶでしょう? 本当のご両親を連れて来てあげたら私に泣くほど感謝するはずだわ」
「そんな事ないと思いますけど」
「あるわよ。こんな何も無い田舎での暮らしには彼もうんざりしてるだろうしね。抜け出せたら感謝するに決まっている」
カレルはサンレームの森を大切にしていた。
森の管理の仕事は、野生の動物や、時々やって来る密猟者との争いで危険も有るけれど、やりがいが有ると言ってた。
今の暮らしに不満なんて持っていないはず。
けれどマグダレーナはそんな考えには及ばないようで、張り切った様子で続ける。
「国王陛下にどれ位近い血筋なのかは分からないけれど、あの純粋な黒髪はかなり近い血縁者よ。少なくともお前の夫のアルフレート殿下よりはマシな血筋だと思うわ。何にしても出自がはっきりすれば、それなりの地位に就けるはずよ。彼は本当に綺麗だし、頭も良さそうだもの」
「……」
「そうしたら、私の結婚相手としても相応しくなるわ。お父様も王族が相手なら反対はしないでしょうし」
「……結婚相手?」
シェールは驚愕して、震える声を出す。
マグダレーナはすっかり機嫌が直ったようで、楽しそうに微笑み言った。
「そうよ。こんな田舎で理想の相手に会えると思わなかったけど、神様は日頃の行いを見てくれているのね。私、カレルを夫にするわ」
「……」
ついこの前カレルと会った時は、こんな事になるなんて想像もしていなかった。
突然やって来た嵐のようなマグダレーナに、大切にして来た想いも壊されてしまいそうだ。
無邪気に笑う義姉を、シェールは呆然と見つめていた。