極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「孤独な環境がそうさせるんだって、何度も言ったでしょ?」

緩く崩れそうな顔を引き締めて振り返ると、声の主の青年は、呆れた様に凛々しい形の眉を上げた。

「お前と孤独って全く結びつかないけどな。悩みなんて無さそうだし」

「失礼な! 私はカレルと違って常に思い悩んでるんだからね」

「はいはい」

青年カレルはシェールの軽口を聞き流すと、片膝をついて山盛りの洗濯物を手に取った。

「今日も大量だな」

「うん、待ち構えていたようにノーラに渡されたの。こき使うよねー」

「それだけ患者が多いって事だろ……ほら、口だけじゃなくて手も動かせよ。もたもたしてたら日が暮れる前に終わらないぞ」

「あっ、うん」

シェールは慌てて洗濯物の山の中に手を伸ばす。
大物はカレルが引き受けてくれたので、後は洗いやすい包帯と当て布だ。

ゴシゴシと擦りながら隣のカレルの様子を伺う。

彼は早くもニ枚目のシーツを洗い終え、三枚目に取り掛かるところだった。

腕まくりをしたカレルの腕は、日焼けしていて筋張っている。

一見細身だけれど、よく見ると逞しい。
森の見守りと言う仕事柄、日々鍛えているそうだから、身体は固い筋肉で覆われているのだろう。

対照的に顔立ちは繊細な印象だ。
濡れたような艶やかな黒髪に、日焼けしている割に滑らかな肌。長めの前髪から覗く瞳は高貴な紫色で、時々うっとりと見つめてしまいそうになる。
凛々しい形の眉、通った鼻筋、薄い唇。

シェールが今まで出会った中で、カレルは間違いなく一番の美男だった。




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