極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「な、なんで?」

カレルには秘密がある素ぶりなんて、した事無かったのに。

「分かるだろ? 一年以上、毎週のように会っていたのに俺たちはお互い打ち明けていない事が多過ぎる。それはふたりとも語らなかっただけじゃなく、聞こうとしなかったからだ」

「そう……だよね」

カレルの言う通りだった。聞きたいと思ったことはあったけれど、口には出さなかったのだ。もし「お前は?」と聞き返されたら困るから。


カレルの事を良く知らないのに、想いだけは大きくなっていった。
彼をとても身近に感じていた。顔も知らない夫よりもずっとずっと大切な人になっていた。


「シェール、俺たちやり直さないか?」

「え?」

どういう意味なのだろう。

「俺はお前とこの先も共に居たい。だから次に会った時、全て打ち明けるよ。何も隠すことなくシェールと向き合いたい。だからシェールも同じ気持ちで居てくれるのなら、隠さずに言ってくれ。思っている事を全て聞かせて欲しい」

真摯に言われ、シェールの内に泣き出したいような衝動が込み上げる。

(カレルがこんな風に心を見せてくれるなんて)

嬉しくて、何も考えずにカレルに縋り付きたくなる。一緒に逃げて!と訴えたくなる。

けれど実際そんな事が出来るはずもなく、シェールは自分を戒めるように手を固く握りながら口を開いた。


「言いたくても、その機会が来ないかもしれない……次は無いかもしれないもの」


今にも泣きそうな顔のシェールに、カレルはフッと笑って見せた。

「珍しく悲観的だな」

「だって……」

「大丈夫だよ。必ずまた会える」

はっきりと言い切るカレルに、シェールは目を瞬く。

「……カレルは自信過剰だよ」

「そうでもないぜ。だって俺はお前との事、運命だと思ってるから」

「え?」

(う、運命って⁈)

驚きの声を上げるまもなく、シェールは強い力で引き寄せられ、カレルの腕に包まれていた。

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