極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
初めて会った時は、彼こそ王子様では?と思ったものだ。

話をしてみたらその口の悪さに、印象は変わったのだけれど。

王子様に見えなくなっても、カレルと会うとシェールの胸はドキドキとざわめいた。

打てば響くような楽しい会話。シェールの軽口に突っ込みながらちょっと意地悪そうに笑う顔。
それから、困っていると当たり前のように助けの手を差し出してくれる優しいところ。

彼の好きなところが、少しずつ増えていった。


カレルと居ると、とても楽しい。
自然と笑顔になっていて、だからカレルには、いつもヘラヘラしているなんて言われてしまう。

彼にからかわれる事も嬉しくて、会えない時は早く会いたいとカレルの事ばかりを考えている。
そんな事、恥ずかしくて絶対本人には言えないのだけれど。

せめて、手助けしてくれるお礼をきちんと言いたいけれど、それもなかなか難しい。照れてしまって上手く感謝を伝えられないのだ。


「また、言えなかったな……」
「何がだ?」

じゃぶじゃぶと包帯を洗いながら、また独り言が出てしまったようだ。カレルが不思議そうにシェールを見ている。

隣に並んで洗濯をしていた為、やけに距離が近い。

間近に迫ったカレルの美しくも男らしい顔に、ついときめいてしまった。
頰が熱を持つのを感じて、シェールは慌てて下を向く。

「な、何でもないよ、いつもの独り言」

そう誤魔化そうとしたけれど、カレルは流してくれなかった。

「また言えなかったって、何か言いたい事があるのか?」
「な、無いよ」
「本当か? ほら、こっち向けよ」

カレルは強引にシェールの顔を覗き込もうとする。

「ち、ちょっと!」

間違いなく赤くなっている顔を見られたく無い。けれど、いつまでも逃げられる訳もなく、ついに正面から目が合ってしまった。
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