極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
予想通り、人がいなくなった途端にユジェナ侯爵の毒が撒き始められた。

「予想以上の田舎だな。こんな所に私を呼び出したのだから、それ相応の理由があるのだな?」

感じの悪いもの言いは予想していたので、シェールは気にする事なく答える。

「手紙に書いた通りです。マグダレーナ様が長く滞在していて困っています。連れ帰って頂けないでしょうか」

「そんな事でこの私をわざわざ呼び出すとはな。マグダレーナにはお前から帰るように説得すれば良いではないか」

「それが無理だからお呼びしました」

シェールがそう答えると、ユジェナ侯爵は呆れたように笑った。

「王弟妃ともあろう者が情け無い」

「マグダレーナ様は、その様に私を見ていませんので」

「まあいい。あれには縁談の予定がある。そろそろ戻って貰わないと都合が悪いからな」

「その話なら聞きました。コルダ公爵家のルドヴィーク様がお相手だそうですね」

マグダレーナの心底嫌そうな顔が思い浮かんだ。絶対嫌だと言っていた様子も。

「……マグダレーナ様はあまり乗り気では無いようでした。無理は良くないのではありませんか?」

こんな事を言う予定は無かったのに、つい口にしてしまっていた。
ユジェナ侯爵の表情が陰るのを見て、失敗したと思う。

「マグダレーナに何を吹き込まれたのか知らないが、お前が口出しする事ではない。それに相手はルドヴィークではない。何の問題も無いだろう」

「えっ? 違うのですか?」

シェールは驚きのあまり目を瞠る。

(まさか、マグの勘違いだったの?)

そんな事で散々振り回されたと言うのだろうか。

がっくりとするシェールに、ユジェナ侯爵は面倒そうに言った。

「コルダ公爵家からは断られた。ルドヴィークはアルフレート殿下の後見役になるからだろう」
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