極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「……お前、なんで真っ赤になってるんだよ」

カレルは驚いたような声を出したけれど、その直後にやりと笑みを浮かべて、更に距離を縮めて来た。

「さては、俺に見惚れたな?」

「なっ……何言ってるの⁈ そんな事ある訳ないから!」

図星でも素直に「はい」なんて言える訳もなく、シェールは大袈裟なくらい否定する。

でも、そんな風にムキになる事こそ怪しいと分かっているから、必死に喉の奥から言い訳を絞り出した。

「これはその……暑いからよ!」

冬に近付くこの時期に何を言っているのだと我ながら思うけれど、他に言い訳を思いつかない。

案の定、カレルは不審そうに目を細め、じっとシェールを見つめてくる。

その何もかも見すかすような瞳に捕らえられ、身動き出来なくなりそうだ。
黙り込んだシェールに、カレルが首を傾げながら言った。

「前から思ってたけど、何でいつも頭を隠してるんだ?」

「え?……ああ、これは日焼けしないようにと思って」

シェールは外に出る時、必ず厚手のベールで頭部を覆っている。

ユジェナ侯爵の言い付け通り日焼けをしないようにする為と、髪と顔をなるべく隠す為だった。

王弟妃としてのシェールは、顔を知られていないから、身分がばれる心配はほぼ無いのだけれど、用心に越した事はない。

カレルやノーラといった、親しい人の前では食事の時などベールを外した事があるけれど、外出時は基本的に被ったままだ。
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