極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「待て。具合が悪いのなら呼ぶ必要はない。私が妃の部屋に行こう」
「しかし、殿下にそのようなお手間をかける訳には……
「構わない……案内しろ」
アルフレートは家令を引き連れて館の中に入って行く。
ユジェナ侯爵はその後ろ姿を見送った後、姿勢を崩して従者に告げた。
「構わないと言っているのだから、放っておいていいだろう。私は少し疲れたので休む。殿下が戻ったら知らせろ」
◇◇◇
アルフレートは、王弟館の閑散とした廊下を歩きながら、隣を歩く家令に不安そうな表情を見せた。
「まだ良くならないのか? どうなっているんだ? あいつが病なんて、まだ信じられない」
「医師の話だと精神的な過労から来ているって話だったけど、診ているのがユジェナ侯爵のお抱え医師なんだ。一度ノーラを呼んだ方がいいかもしれない」
「は? ユジェナ侯爵のお抱え医師?……あいつがノーラを呼ぶのを嫌がったのか?」
身分がばれるのを恐れたのだろうか。
「いや、ユジェナ侯爵の指示だ。田舎の村の薬師なんかには王弟妃の身体は診せられないって」
「あり得ない、ノーラ程優秀な薬師は都にだってそういないってのに。ルーク、お前も何でユジェナ侯爵の言いなりになってるんだよ」
ジロリと睨まれて、家令ルークは苛立ちを取り繕う事なく答えた。
「仕方ないだろ? 俺の身分は明かしていないんだから。弱小王弟の家令の立場で、今をときめく侯爵に逆らえる訳がない」
「そこをなんとかするのがルークの役目だろ?」
ルークは大袈裟に溜息を吐いてみせた。
「そもそもお前が早々に彼女に正体を明かしておけば済む話だっただろ? それを何かと理由をつけては引き伸ばして……心を閉ざして能面のような顔しか見せない彼女の相手を三年近くもして来た俺の苦労はお前のせいだ!」
「仕方ないだろ? 側にいられないのが分かっているのに言っても不安にさせるだけだ。あいつに余計な心配をさせたくなかった」
バツが悪そうな表情のアルフレートに、ルークは目を細めて言った。
「理由はそれだけじゃないだろ? 本当の事を言って嫌われるのが怖かったんだ。何も知らない彼女を散々騙して来たんだからな。初対面のふりをして近付いて来た男が実は自分の夫だったなんて知ったらどれだけ驚き傷つくか……そう分かっていたから逃げてたんだろ? なあ、カレル?」
ルークに攻め立てられ、カレルはぐっと言葉に詰まる。
けれど、すぐに立ち直り堂々と言い返した。
「しかし、殿下にそのようなお手間をかける訳には……
「構わない……案内しろ」
アルフレートは家令を引き連れて館の中に入って行く。
ユジェナ侯爵はその後ろ姿を見送った後、姿勢を崩して従者に告げた。
「構わないと言っているのだから、放っておいていいだろう。私は少し疲れたので休む。殿下が戻ったら知らせろ」
◇◇◇
アルフレートは、王弟館の閑散とした廊下を歩きながら、隣を歩く家令に不安そうな表情を見せた。
「まだ良くならないのか? どうなっているんだ? あいつが病なんて、まだ信じられない」
「医師の話だと精神的な過労から来ているって話だったけど、診ているのがユジェナ侯爵のお抱え医師なんだ。一度ノーラを呼んだ方がいいかもしれない」
「は? ユジェナ侯爵のお抱え医師?……あいつがノーラを呼ぶのを嫌がったのか?」
身分がばれるのを恐れたのだろうか。
「いや、ユジェナ侯爵の指示だ。田舎の村の薬師なんかには王弟妃の身体は診せられないって」
「あり得ない、ノーラ程優秀な薬師は都にだってそういないってのに。ルーク、お前も何でユジェナ侯爵の言いなりになってるんだよ」
ジロリと睨まれて、家令ルークは苛立ちを取り繕う事なく答えた。
「仕方ないだろ? 俺の身分は明かしていないんだから。弱小王弟の家令の立場で、今をときめく侯爵に逆らえる訳がない」
「そこをなんとかするのがルークの役目だろ?」
ルークは大袈裟に溜息を吐いてみせた。
「そもそもお前が早々に彼女に正体を明かしておけば済む話だっただろ? それを何かと理由をつけては引き伸ばして……心を閉ざして能面のような顔しか見せない彼女の相手を三年近くもして来た俺の苦労はお前のせいだ!」
「仕方ないだろ? 側にいられないのが分かっているのに言っても不安にさせるだけだ。あいつに余計な心配をさせたくなかった」
バツが悪そうな表情のアルフレートに、ルークは目を細めて言った。
「理由はそれだけじゃないだろ? 本当の事を言って嫌われるのが怖かったんだ。何も知らない彼女を散々騙して来たんだからな。初対面のふりをして近付いて来た男が実は自分の夫だったなんて知ったらどれだけ驚き傷つくか……そう分かっていたから逃げてたんだろ? なあ、カレル?」
ルークに攻め立てられ、カレルはぐっと言葉に詰まる。
けれど、すぐに立ち直り堂々と言い返した。