極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
「俺は逃げてなどいない! シェールには今から本当の事を話して理解して貰う。次に会った時はお互い秘密は無しだと約束したからな」
「ふーん、つまりやっと、くっついたって事か。人に面倒を押し付けてる間に上手くやったな」
「違う! シェールに会ったのは偶然だったし、そういう話になったのも流れだ。計画的じゃない。俺はしっかりと自分の準備を進めていたんだからな」
ルークは疑わしそうな目をカレルに向けながら、一つの部屋の前で立ち止まった。
「まあ今となってはどうとでも言えるしね……さて、ここが彼女の部屋だ。感動の再会だな」
「……ああ」
カレルの表情に珍しく緊張が浮かぶのを横目に、ルークは扉をノックして声をかけた。
「ラドミーラ妃殿下。アルフレート殿下がお戻りになられました。今、こちらにおいでになっております。入室を許可頂けないでしょうか」
しばらくしてから、細い声が聞こえて来た。
「構わないわ、どうぞお入りになって」
その声を聞いたルークの顔に戸惑いが浮かぶ。
「どうした?」
カレルが声をかけると、ルークは小さく首を傾げた。
「いや、今の返事が意外で……こうやって部屋に入っていいか聞くと、彼女は必ず『入りなさい』って答えるんだ。まるで台本でもあるみたいにそれしか言わない、けど今の返事は違かっただろ? いつもより自然な受け答えなんだけど、逆に違和感が……」
「……何か心境の変化が有ったのか? どちらにしても俺としては違和感しかないが」
カレルがよく知っているシェールなら、元気よく「どうぞー」なんて言いそうだ。
中にいるのは、カレルの知らない王弟妃としてのシェール。
そう感じ更に緊張の高まりを感じながら、カレルはルークに続いて部屋に入る。
シェールはゆったりとしたドレス姿で、ソファーに腰をかけていた。その姿を見た瞬間、カレルの胸の中には強烈な違和感が生まれた。
「ラドミーラ妃殿下、お加減はいかがでしょうか?」
けれど、ルークは躊躇う事なく声をかける。
それに応えてシェールがこちらに視線を投げかけて来た。
カレルの好きな艶やかな蜂蜜色の髪、深みのある青い瞳、真っ白な肌。
いつものシェールの姿。
それなのに、カレルは息を呑み、険しい表情を浮かべて言った。
「お前は誰だ?」