極上な王子は新妻を一途な愛で独占する
ミシェールの言葉には、必ず目的を叶えると言う意志が込められていた。
見知らぬ男の妻になる事さえも、目的の為なら些細な事のような口ぶりから、強い覚悟を感じた。

「……なぜ、そこまでリント村の権利を欲しがる？ ユジェナ侯爵は領主として問題があるのか？」

ミシェールは微塵の迷いもなく頷く。

「リント村は、過去にユジェナ家の命令で毒草を育てていました。その影響はまだ濃く地域に残っているのです。毒草園跡の周囲には危険な罠があるし、毒草も一部残り野生しています。それが原因で何人もの村人が体を壊しました。私達住人は環境改善を何度もユジェナ家に願い出ましたが全て却下されたんです。勝手に毒草園跡を焼却する事なども許されなかった、八方塞がりだったんです」

ミシェールの表情が沈んだものになる。そしてテオドルもそっと目を伏せる。

その様子を見ていたルークが言った。

「もしかして君もリント村の関係者なのか？」

テオドルに代わりミシェールが答えた。

「ええ、テオドルもリント村の出身。私とシェールの幼馴染です。私達三人が主体となってユジェナ侯爵を謀ったのです。テオドルは高い医療の知識を武器にユジェナ侯爵に近付き、情報を得ていました。私達が実際に入れ替わる際、私を館に案内してくれたのも彼です」

「そうだったのか……だが、そんな危険な場所なら村ごと住まいを移した方が良かったんじゃないか？」

ルークの問いに、ミシェールの目が険しくなった。

「不可能です。リント村は毒を育てていた過去から周囲の村から忌み嫌われていて受け入れてなど貰えません。それに村の半分は老人子供。家を失って新しい場所で生きていくのは難しい」

ミシェールの厳しい口調にルークが言葉を失っていると、カレルが静かに口を開いた。

「シェールもお前のように悲壮な覚悟のもと、千日の間、王弟妃の役を演じていたと言うことか？ そもそも千日の間、なぜ入れ替わる必要があった？」

「それは……」

ここで初めてミシェールが気まずそうな顔で、口籠った。
< 91 / 102 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop