月光と罪

その日はレポートの提出で大ッッッ変忙しい日だった

最近急にレポート、もとい課題が難しくなってきた気がする

しかし、これをしなければ単位が危うく、そうなれば困るのは私自身

大嫌いな勉強でも、やる他ない


ユキノは自分は家事代行アンドロイドだから勉強は専門外

勉強で頼りきりだった兄は伯父さんと一緒にどこかへ行ってしまっていた

いまこなしているのは生物基礎

二重螺旋構造だとか、mRNAだとか、ミトコンドリアだとか、もう聞いたことのない単語ばかりで頭がパンク寸前でもう無理

諦めようかと考えていたその時、部屋をノックされた

『んんんんん・・・なに〜?』

体勢を変え、声のする方向を見遣れば椅子はギッと音をたてた

ドアが開き、姿を見せたユキノが私に問う

「・・・麻穂様、本日のティータイムにはシフォンケーキをご用意しておりますが、お勉強は順調でしょうか?」

私はむすっとしながら答えた

『お勉強が順調になるには甘いものが足りてませーん』

「わかりました。それでは終わったら呼んでくださいませ」

そう言ってドアを閉めようとするユキノに向かってちょっとまったーーーー!!!と大声をあげた

『ケーキ食べたいから!!課題よりケーキ食べたいの!!ケーキ食べたら頑張れるから!!ね!?』

必死に訴えるも、ユキノは眉1つ動かさない

『わかった!今週好き嫌いいって食べ物残さないから!あと、お手伝いたくさんするから!ね?ね??』

「それでわたくしが良いと言って、レポートが終わらなかったらどうなさるおつもりですか?」

はぁ、とため息を吐きつつ私を見るその目は憐憫さえある

ユキノの言っていることはもっともだ。

もっともだけれども。

そんなので引いてちゃ私は死ぬ。

勉強のし過ぎで、確実に!

『じゃあじゃあ、おわらなかったら!おわらなかったら、好き嫌いなくすし お手伝いも沢山する!』

ユキノはようやく頷いた

・・・にやりと笑いながら

「いいでしょう、終わらなかったら・・・憶えておいてくださいね」
『終わらせればいいんでしょ?大丈夫だよやるし!!』

威勢よく啖呵?を切ったけれど、
数時間後には私ははやくも後悔していた

結局ユキノに手伝ってもらい、なんとか日付の変わるギリギリにようやく提出し終わったのだった


< 10 / 23 >

この作品をシェア

pagetop