月光と罪
珍妙な格好をした妹を見た時、僕は一瞬思考がフリーズした
思考は止まるが、鼓動は加速した
今日は水色なのか・・・とか
肌が白いな・・・とか
変なことは緩やかに頭をよぎっていくのに 言葉は失われたままで
だが頭を下げて謝られるとその姿はかなり滑稽で、吹き出すのを我慢するのには苦労した
よたよたと部屋から出ようとして、ゴミ箱に蹴つまずき、洗濯機に頭をぶつけるまでは我慢したさ
可笑しな姿はさながら不出来なロボット
人間のあさより 機械のユキノの方がよく出来てるとは何事だ
いや、造られたものだから完璧に出来て当然か・・・
そんなことを思いながら僕はまた書物に目を落とす
元人間のヴァンパイア
そんなイレギュラーな僕の身体は日々軋み、ガタがきている
時々、動悸が激しくなることがある
その頻度も生きていくと共に短くなり、最近ではもう1日に数回のペースだ
たかが人間という小さな器に、ヴァンパイアの崇高な魂が入りきれるものか
キャパオーバーも寸前
それを何とかすべく、調べているんだ
手立てはないものかと
吸血衝動も酷く、もうすぐバケモノになるのではないかと思う
いつ動悸や渇きが襲ってくるかわからない
あさと一緒にいるのは危険すぎる
それはわかっているのだが、さっきのように会うとやはり嬉しいと感じてしまう
あさは昔からバカで面白かった
そんなところが好きだった
だから・・・守らなくてはいけない
思わず緩んでいた口元がきっと真一文字に結ばれる
あさを守れるのは僕だけなのだから・・・