月光と罪
「麻穂は本当にユキノが好きだね」

伯父さんは抱きしめていた私を離した

その顔にはいつもの微笑

私の大好きなかっこいい伯父だ

『もちろん!だって、ユキノといると安心するんだもん!』

私は大きく頷いて見せた

すると伯父さんは首を傾げて言う

「・・・どうして?」

『ええっ、どうしてと言われても・・・わからない、なんだか傍にいると安心するの。だから、怖い夢を見た時にはいつもユキノのベッドで寝るの!よく眠れるんだよ!』

私がそう言うと、そうだったんだね・・・ と、伯父さんは沈んだ声でこたえた

終いにはふい、と顔を背けられてしまう

どうしたのだろうか、等と考えなくても長く一緒にいた私にはわかる

子供っぽいところのある伯父さんのことだ
きっと、眠れない時は自分のところへ来て欲しかったのだろう

でも私ももう16歳

異性のベッドに潜り込んで許されるような、そんな歳ではない

『・・・でも伯父さんといるのもすっごく安心するから、次からは眠れなかったらユキノじゃなくて伯父さんのとこに行こうかな〜』

その場限りの嘘

空気を軽くするためだけの嘘だった

しかし伯父さんは予想を遥かに上回るキラキラした目を向けてきた

今夜、すぐにでも一緒に寝ようとでも言いたげな雰囲気だ

・・・・・・あぁ、言わなきゃよかったなぁ。

このロリコンめ

心の中でそう悪態をついたが、けして嬉しくないわけではない

小さい頃から私、もとい私とお兄ちゃんはひとりで寝ていた

親が家にいなかったから

大人と寝るのは叶わぬ夢だったが、今は叶ったのだ

・・・もう少し小さい時に叶っていればなぁとは少なからず思うが。

伯父さんは人間性は落第点だが、親としての人間性は及第点だろう

私は車の中で早く家につくように少し祈ってみたりした
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