月光と罪
麻穂(あさほ)
だいぶ田舎くさい名前をつけられたものだと嫌になる
しかし名前をつけたという父は小言を言いたくても近くになんていない、母もまた然り。
『だって、おかしいと思わない?
絶世の美女と謳われるママの娘なのに麻に穂なんだよ?』
「何か思惑があってのことでしょう。
嫌がらせがしたかったとか、そういった類の」
窓の拭き掃除をしているユキノに何度言ったかわからない愚痴を今日もこぼした
通信制高校に進んだ私は基本的に自宅に居る
保護者は伯父さん、家事をこなすのはこの使用人 ユキノ
ユキノとは気が置けない仲だが、そっけなく辛辣な言葉にはよくへこまされる
『・・・家事代行アンドロイドのくせによくもまあ余計な一言が言えるよね』
「お褒め頂き光栄です」
『・・・・・・・・よくできたアンドロイドですこと』
「恐縮です」
ユキノの正式名称はアンドロイドYUKINO
人に仕える為に生み出されたロボットだときいた
が、ここまで精巧に作られているとは知らず、出会った当初幼かった私は人間だと疑わなかった
しかしその手の冷たさや無表情さは紛れもなくロボットそのもの
そのギャップに恐怖した時期もあった
しかし今ではユキノの語彙力は私の退屈を紛らわしてくれる良い特技だった