姉さんの先輩は狼男 孝の苦労事件簿③
彼は、瞳を妖しくぎらつかせた。
「もう、狙いは付けてあるんだ。
この際、手近なところでもいいだろう。
うまそうな子を見付けた。
一人暮らしだって言ってたから、都合も良い……」
「もしかして……」
「いたじゃん、あの時。工場見学でさ。
次は、場所も時間も教えねえぞ。
俺一人でいい。お前に足を引っ張られるのはごめんだ」
「それで、上手くいくとでも思ってんの?」
「上手くいくいかないの問題じゃねえんだよ!
……だんだん、追手が迫ってきている。
……せっかく逃げたのに、これじゃ意味が無くなっちまう。
もし捕まれば、今度こそ一生牢獄だ。そんなのって、あるかよ……」
彼は頭を抱え、唇を噛んだ。
彼女は怒りが治まると、今度は拗ねた。